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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「哀しき獣」を観た感想(ちょっとネタバレ)

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 韓国映画です。アクションとなると痛々しさがひしひしと伝わってくるというのが韓国製映画に見られる傾向だと思います。監督は「チェイサー」で注目されたナホンジンです。
 さて、まずは結論から。面白いです。なんとなくひっかかるものはありますが。
 民族差別、同じ民族の間にある経済格差を内包したアクションでした。アクションだけではなくサスペンスも含んでいます。
 中国の満州に延吉という都市があります。そこは朝鮮族が多く住みます。そのうちの一人が莫大な借金を返済するため殺人を請け負ってしまい、韓国へ行くという話です。
 朝鮮族って朝鮮人と何かちがうのかなと思いました。同じ朝鮮人だと思っていたのですが。作中で、韓国へ渡った主人公が韓国で「おまえ、朝鮮族だろ」と韓国人から言われていたものですから。でも、ちょっと調べてみると朝鮮族というのは中国在住の朝鮮人のようです。なのに、なぜ韓国であんなことを言われてしまったのでしょうか。
 映画は吹き替えではなかったのですが、何か訛りなど言葉の違いがあったのかもしれません。
 さあ、そんな「哀しき獣」ですが、韓国でのタイトルは「黄海」です。その名のとおり、中国朝鮮族と韓国の間には黄海という隔たりがあります。主人公は韓国への密航のために黄海を小さな漁船で命がけで渡ります。
 いよいよ韓国ソウルに着いた主人公です。殺すべき人間を探します。見つけて、その人間の行動パターンを調べます。このへんはかっこいいサスペンスという感じでした。
 その部分が終わると韓国映画の本領発揮です。激しい、痛々しいアクションが始まります。その血みどろの観客も痛みを味わうようなアクションはずっと続きます。
 このアクションがちょっと複雑でして。主人公と、その主人公に殺人を依頼したミョンジョンハク、殺された人間と深い関係にあったキム社長、この三角関係が始まります。主人公はミョンジョンハクとキム社長の両方から追われる羽目になります。もちろん警察からも追われます。さらにはミョンジョンハクとキム社長との間でも激しい戦闘が行われます。このハチャメチャな関係の間での戦闘がとにかくすごいです。苦手な人は苦手でしょう。
 アクションに銃はほぼ出てきません。斧、包丁、大きな骨が武器として使われます。だから、観てるこっちも痛かったです。カーチェイスも激しいです。ソウルやプサンの街中で自動車がどんどん廃車になっていくのですが、ハリウッドのような軽い破壊ではありません。乗っている人間がつぶれて死んだか重傷を負っただろうなというのがわかるカーチェイスでした。韓国映画の自動車破壊ってすごいですよ。こんな撮影がよくもまあできたものです。
 さて、注目はミョンジョンハクです。こいつがめちゃくちゃ強いんですよ。キム社長がミョンジョンハクを殺害するため部下を何人か延吉に送り込みます。ところが、ミョンがその部下を一瞬で返り討ちにしてしまいます。そのあともミョンはターミネーターみたいな強さでキム社長を追い詰めるし、主人公を追撃します。主人公が海に飛び込んで逃げてもミョンも海に飛び込むという始末。
 さらには、真犯人です。実は、主人公は指示された相手を殺すことができませんでした。別の者に先を越されたのです。はたして真犯人は誰なのか。ここも見どころですよ。
 その、私がひっかかる部分というのは「真犯人は誰か」というところです。この映画を観ているとその部分が分かりにくいのです。いや、正確に言えばわかりにくいかもしれないのです。アクションばかりに目が行ってしまって、サスペンス部分が飛んでしまっているような感じがしないでもないです。なんだろうな、でも、この映画はアクションだけじゃないんですよ。出てくる人間たちの演技とサスペンスも注目すべきだと思います。
 観てください。みんなが判断すればいい!(投げた!)