米軍に追われるタリバン兵らしき男:ムハンマドの逃亡劇です。
ムハンマドの正体は最後までわかりませんし、米軍が彼を追跡する理由もわかりません。とにかく作中の情報量がゼロに近いですから。ひたすら逃げる姿を描いているだけです。何しろ、ムハンマドのセリフもゼロです。痛みで叫んだりするだけですよ。
ただ、ムハンマドがなぜこのような状況に置かれたのかを示すような回想がわずかに入ります。彼の妻らしき女性が中心で、回想シーンは必ずイスラム過激派による洗脳のような唱える声が入ります。あくまで私の予想ですが、その女性がパッと光に包まれてそれ以降回想がなくなるので、彼の妻は米軍の誤射によって死亡したのかなと思います。
さて、ムハンマドはとにかく逃げますが、その舞台が厳冬の山中でした。食糧もなく、米軍に捕まるのが早いか寒さで死ぬのが早いかという状況が続きました。それで、彼は出くわす人間を殺害してしまうほど必死に生きます。壮絶の一言です。前半は乾燥した砂漠から始まり、その中を逃げるムハンマドが登場しますのであしからず。まあ、自然は彼にずっと厳しいままでした。
そんな逃亡劇にどんなメッセージがあるのかというと、逃げるムハンマドと追う米軍のどちらが悪で、どちらが善という描き方はないです。そんな描き方はされてないと思います。米軍の追跡が少々間抜けなところもあるので、やや米軍が悪かなと感じるところもありますが。
情報量の少ない作品ですが、ムハンマドは頭が切れるキャラだなと思いました。逃げる中で、運の良さに助けられる部分もありましたが、その運をしっかり自分のものにして頭を使って状況を好転させた場面もありましたので。
逃げる中で、幻影を見てしまう場面もあり、今年の映画「127時間」を思い出しました。あれもまた自然が厳しくて最悪の状況に置かれた主人公の壮絶な映画でしたなあ。
ムハンマドは序盤で鼓膜が裂けたので音が聞こえない状態ですが、それがまた終盤で出会う女性とのやりとりを泣けるものにしてしまいますよ。この女性が彼を助けるものの、でもやっぱり女性の家から出ていってもらうときの方法が映像作品の為せるすばらしい技だなと思いました。
この映画、すげえよ!
以上です。