やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

四国鉄道制覇の旅日記 その2


 徳島県西部の池田といえば険しい四国山地の中の町で、寒いのですが今日はそれほどでもないです。ここからは土讃線で高知へ。岡山、高松から特急南風と特急しまんとがやって来ます。南風は岡山から瀬戸大橋を渡ってきて高松から来たしまんとと連結されて土讃線に入ります。
 徳島から乗ってきた特急剣山185系は中もボロボロでいっぱいいっぱいでカーブではかなりの減速を強いられていましたが、ここからはきっとそんなことないですよ。2000系ですからね。JR四国の車両開発能力は高いのです。2000系は四国の開発した振り子式特急用車両でして、そりゃもうすごいのです。すごいはず。で、その2000系がやって参りました。先頭車が停まるところに立ってケータイで撮影です。先頭車はシュッとしています。丸く傾斜しています。そして、グリーン席もこの先頭車にあります。乗ってみると普通車とは違う豪華な席が進行方向に向かって左手に1列、通路をはさんで右手に2列です。私は左手1列の前から4番目の席に座りました。ほかに乗客は3人ぽっきりです。ま、グリーン車ですから。ゆったり、風呂につかる感じで座ります。
 特急剣山のときとは違ってだいぶ速度が出ます。四国山地を縦断する路線ですがトンネルで直線が多いのです。ただカーブもきついのですが。振動もします。車掌にきっぷを見せて、座席を離れて喫煙ルームでい1本いただきました。喫煙ルーム狭っ! 私が入ったらそれでいっぱいになってしまいます。ほかの車両は乗客少ないです。座席は3割も埋まってないです。JR四国の特急は高速バスや車に客を奪われて死にかけなんでしょうけど、高知へ行く特急は特にひどいようですぞ。これだけ揺れるとしかたないかなあ。乗り心地がいまいちです。車内を歩くのもたいへんですわ。険しい山地を抜けて高知平野に入ると速度がぐんと上がりました。
 四国の特急列車は先頭からの眺めがすばらしいんですよ。特急には185系、2000系、8000系の3種類があります。正確には新型2000系もあるのですが。いや、眺めがいいというのは今回の旅で気づきました。座席から運転台までさえぎるものがなく、私鉄の観光特急、たとえば小田急ロマンスカーのような眺望が楽しめるのです。あ、8000系はまだ乗ったことがなくて、眺めがいいかどうかがわかったのは旅2日目ですが。
 高架になったばかりの高知駅、周辺は再開発中のようです。高知駅から先は乗客が多いようですよ。よかったね。その次の停車駅伊野で降ります。ここから高知の私鉄、土佐電鉄乗りつぶします。雨が降っているけど傘がなく、屋根づたいにJR伊野駅から土佐電鉄いの駅へ向かいます。いの駅の駅舎はできたてのようで木材を多く使っていていい香りがします。鼻炎で鼻がつまっていますがわかりますよ。ほかに電車を待っているのは皆おじいちゃんおばあちゃんばかりで少しでも若い人はいません。

 土佐電鉄は全線が路面電車です。見た目がたいへん古い電車ががったんごっとんとやってきました。なんかもう、時代を感じさせます。昭和が走っています。

 車掌兼運転士から一日乗車券を購入しました。一日乗車券は乗る年月日を削り取るという面白いものです。今までグリーン車でゆったりでしたが、ここからはごく普通の電車のシートで、がったんがったんと道路の真ん中の軌道を走ります。伊野から高知の中心であるはりまや橋まで30分揺られてました。伊野と高知はりまや橋と後免を結ぶ東西線はりまや橋で交わりJR高知駅高知市街南部を結ぶ南北線土佐電鉄なのですが、このはりまや橋南北線に乗り換えます。JR高知駅行きと南の桟橋通5丁目行きのどちらが先に来るでしょうか。先に来たほうに乗ります。というわけでJR高知駅行きに乗りました。JR高知駅前は工事中で路面電車の乗り場も一部が完成しているだけです。JR高知駅に着いて電車を降りて、降りた電車に再び乗りました。なんか恥ずかしいです。高知には三越百貨店があるはずですがそれが見当たらずおかしいなと思いつつ終点の桟橋通5丁目まで乗りました。ここでも一度電車を降りて再び乗ります。はりまや橋まで乗ってここから再び東西線です。今度は後免町行きに乗ります。後免とは高知の東にある南国市(なんこくと読みます)の中心街でして「ごめん」と読みます。徳島からずっと車窓や車内をきょろきょろ見ていましたが飽きてきたので卒業したサークルから送られてきた冊子を読みました。時間つぶしにはちょうどいいや。後免町に着きまして、ここから土佐くろしお鉄道後免町駅に移動しました。土佐くろしお鉄道バースデイきっぷで乗り放題ですし、今回の旅の目的は四国の鉄道制覇ですから。予定より1本早い列車に乗りました。順調ですな。四国ですし、列車本数も少ないですから予定が狂うとたいへんなことになります。
 さて、第3セクター土佐くろしお鉄道ですが意外と乗客が多いです。ちなみにワンマン列車、1両編成ですけどね。にもかかわらず運転士以外に車掌がいますよ。女性です。けっこうかわいいのでちらちら見てしまいました。すまんすまん。
 土佐くろしお鉄道高知県の東部にごめんなはり線があり、西部に中村宿毛線があります。まずはごめんなはり線を乗りまして、終点奈半利駅に着きました。ごめんなはり線は全線が高架でして、けっこう長い路線ですが各駅停車でもサクッと終点に到着です。ここでいったん改札口を出て周りに何があるのかをちょっと見てまた同じ列車に乗りました。後免まで戻ります。行きは各駅停車、帰りは快速列車なので帰りは行きよりもサクッでした。後免からJR土讃線に入ります。既に特急南風で乗りつぶした部分です。後免から高知まで土讃線で、この列車の終点高知で降り、改札口を出ました。
 高知駅JR四国の中でわずか2つしかない自動改札口のある駅です。高知駅は去年でしたっけ、高架になったばかりでたいへんきれいです。でもバースデイきっぷは自動改札に通らないと思われるので人のいる改札口に回ります。このとき私は無言なんですよ、きっぷを係員に見せるとき18きっぷとかなら「18きっぷです」とか言いながら改札口を通過しますがバースデイきっぷですから恥ずかしいです。だから係員に見せたあとで「ありがとうございます」と言うのです。係員はきっぷを通常なら回収しますがバースデイきっぷなので回収しようとして、あれ、バースデイきっぷじゃんとか思いつつ回収しようとした手を引っ込めるのですが。
 このあと乗る予定の土讃線特急のグリーン車のきっぷを用意しました。きっぷ購入ではないのでねえ、なんといえばいいですか、タダで購入です。高知駅では時間が空きまして、駅前の高速バス乗り場をのぞいてみたり、みやげ売り場をうろうろしました。そしたらロールケーキとかチーズケーキが売ってました。ケーキなのに半熟って何だ! 買いました。ただし冷凍です。常温で2時間かけて解凍できるし問題無しですな。列車の中でゆっくり溶かしましょう。
 プラットホームに出ました。自由席が停まるあたりには多くの乗客がいて、私はグリーン車なので先頭車の停まる位置に立ちました。なんという優越感。あ、時間のことを全然書いていませんが自宅を出たのが6時、この時点では15時40分です。土佐電鉄乗りつぶして、高知県で残るのは西部となりました。ここからは特急南風11号です。岡山から来て高知に停まり、高知県西部の須崎、中村、最も西の都市宿毛まで行きます。ただしこの列車は中村が終点で中村から宿毛までは普通列車が接続しています。
 グリーン車に乗りますと車窓に飽きてますからサークルの冊子を開いて読みます。停車駅に近づくと冊子を閉じてどんな駅なのか町なのかを見ます。
 岡山と高知の間の利用者は少ないですが、高知市と県西部の諸都市の間の利用は多いようで、少し安心しました。まあ、高知と県西部を結ぶ高速道路がまだ途中までですし高速バスがないですからねえ。
 さて、窪川駅が近づいてきました。この駅が土讃線の終点です。この先から中村、宿毛方面は土佐くろしお鉄道中村宿毛線愛媛県宇和島へ向かうのが予土線です。列車は窪川から土佐くろしお鉄道に入って中村へ向かいます。土佐くろしお鉄道は軌道が良いので列車の速度が少々上がりました。中村へ到着です。高知県西部の中心都市です。ここから宿毛まで普通列車に乗り換えて終点宿毛まで行きます。と、1両編成で、客がめちゃくちゃ多い! 特急から乗り換える乗客は私も含めてちょっと驚いていますが、普通列車は学生さんで満杯ですよ。ちょっと、どういうこと! 
 ここからは宿毛まで30分間立ちました。こんなの想定していなかったです。きっとガラガラだろうと思っていましたが。地方の鉄道なんて、ましてや第三セクターですよ。空気しか運べないと思ってましたよ。ま、客が多いのはいいことです。けっこうなぎゅうぎゅうですが、中村から宿毛までは山が少なく、国鉄の終わりつつあった頃から建設された路線なのでほぼ直線であまり揺れませんでした。
 学生がねえ、ちょっと気が回っていないようですよ。自分の荷物を座席に置いているのです。おかげで貴重な座席が3席、人間が座っていません。ここで「荷物を膝の上か荷物棚に置いてくれない? 立っている人がこんなに大勢いるだろ」と言うべきなのですが言えないのが私のだめなところです。ほかのお客さんも言わないし。誰か言うだろう、言ったら面倒なことになるだろう、ま、立ったままでもいいだろう、ということなのでしょう。
 宿毛までほぼ満杯、高知県の最も西にある駅に到着しました。ここから窪川まで引き返すことになります。1時間後にやってくる特急を待ちます。あー、暇だ、駅周辺は何もないし、駅の中は18時ですが店も閉まっているし。うん、でもベスト電器が駅の隣にあるぞ、家電を見学しよう。店内をぶらぶらして駅に戻りました。
 さて、なぜ特急列車は中村を終点として宿毛まで行かないのか、といいますと。中村までの特急は一日9往復、宿毛までは2往復です。あの事故さえなければ特急のほとんどは宿毛まで走ってたんですけどねえ。その昔特急列車が終点の宿毛で減速せずに駅に突っ込んでしまいましてねえ。それが原因で特急が中村までになってしまったのですよ。
 19:15、宿毛を出ました。窪川までサクッと走って、ここから予土線に乗り換えます。列車がトンネルを通過するとき気圧の変化で耳が痛くなりました。それに窓が外に向かって膨らむのが確認できました。車体がびりびり震えました。これまで乗った列車と違ってやけに振動しました。揺れるのではなく振動するのです。びりびりがたがたです。
 20:16、窪川を出発します。さっきから私は冊子を読みっぱなしです。夜だし外が見えませんから。予土線は高知西部と愛媛南西部を結ぶ鉄道です。昭和後期に建設されたので軌道は良好です。地図で見るとほとんどまっすぐです。本数が大変少なくて窪川を出る最終便が20時台で、これに乗れなかったら計画は崩壊です。
 車両は1両、運転士ともう一人の乗務員がいます。座席はボックス席がない全席ロングシートです。四国なのに全席ロングシートってすごいですな。徳島にはないですよ。ロングシートというのは東京や大阪など都会では当たり前の座席のことで、車両の窓に沿って両側に並ぶ形のものです。それに対して田舎はクロスシート、特急などの優等列車クロスシートです。予土線は軌道が良好で、案の定、各駅停車だけどめっちゃ速いです。駅間距離が長くてトンネルが長くて面白い路線です。トンネルを出たらすぐに駅で、駅を出たらすぐにトンネルだったり。さて、県境が近づいてきました。気づいたら、客が私一人。乗務員が二人。乗務員のほうが多いぞ! サビシー! と、そのときプアーンと激しく警笛が鳴らされて急ブレーキです。と思いきや再び加速しました。なんだったんだろう。それに速度も落ちました。県境が近づいた途端に急なS字カーブが連続するようになったのです。なるほど、昭和後期に建設されたのはここまで、ここから先は昔からあった路線ということですな。
 また警笛。さっきよりも厳しい急ブレーキがかけられてついには停車してしまいました。ちょっと! どうしたの! ぐしゃぐしゃばきんという嫌な音がしましたけど。冊子を読むのをやめて乗務員の様子をうかがうと。「ちょっと、鹿をひいてしまいまして」と唯一の客である私に笑いながら話しかけてきました。一番後ろにいた乗務員が運転士のところへ駆け寄って話し合いが始まりました。
運転士「ぐっしゃぐしゃじゃ」
乗務員「どうしましょうか」
運転士「戻らんでもええじゃろう」
乗務員「そうですねえ」
運転士「引いた地点からだいぶ進んでしもうたけんのう。車両の点検だけでええじゃろう。宇和島には連絡しといてくれ。ちょっと点検してくるけえ」
乗務員「わかりました」
 さて、一番ドキドキしているのは私でしょう。なぜならこの列車の終点は宇和島ですが。私の今日の予定は宇和島では終わらず宇和島からさらに乗り換えるのです。ただ、宇和島での乗り換え時間はわずか1分、ここでこんなに時間をかけられてしまうと計画がだめになってしますぞ! 宇和島から予讃線の最終列車で八幡浜というところまで行きたいのですが。
 でも、停車はわずかに数分程度で、すぐに走り出しました。大丈夫かな、大丈夫かな、大丈夫だと思うんだけどなあ。なぜなら宇和島に理由があります。宇和島の一駅手前北宇和島駅で予土線予讃線と合流して単線になり宇和島へ向かうのです。予讃線宇和島〜松山〜高松を結んでいます。宇和島は愛媛で一番端の駅です。北宇和島宇和島の間が単線ということはこの列車が宇和島に到着しないと予讃線の列車は出発できないのです。
 不安の募る私は運転士じゃないほうの暇そうな乗務員に話しかけました。予讃線八幡浜行きに乗りたいのですが宇和島で乗り換えることができるかどうか。「この列車が着かんと八幡浜行きが出れんのですが、これが着いたらそれがすぐに出ますので乗り換えは難しいです。でも、北宇和島なら安全に乗換できますよ」
 北宇和島予讃線に乗り換える。それは私も知っています。ただ、それをやってしまうと宇和島北宇和島区間が乗れないことになります。それはだめだ! 宇和島まで行く。宇和島で乗り換えに挑戦する。だめならダメでどうにか調整できる。ま、調整できるんですよ、だから宇和島まで行きます。
 宇和島でちょっと待ってもらうようにできないでしょうか。四国ってそういうわがままが通ったりしますよ。駆け込み乗車に失敗した、乗り遅れた客がいたら四国の鉄道は走り出しても停まってドアを開けてくれますからね。でも、私の場合はそんなわがままを言いたくなかったです。特殊な旅をしていますからねえ。
 さて、途中から学生が一人乗ってきました。これで乗客は二人に。ワンマン列車なので整理券を取ろうとしたら運転士が「取らんでええけん」 整理券を出す機械が壊れているようです。乗客二人を乗せたワンマン列車は激しいS字をゆっくりゆっくりゆっくり走ります。ちょっとイラッとしました。頭の中は乗り換えができるかどうか、それともうひとつ。妄想もしていました。『私が姫透(一部の方には説明不要。私の脳内世界にいるすばらしい存在)と出会ってこの世界を支配する。大量の金を集めて四国に投入して四国のバスと鉄道を支配して鉄道全線を複線、高架、電化、標準軌にして列車本数を特急と快速を1時間に1本ずつ、普通列車を1時間に3本程度確保、料金を限界まで下げる。予讃線土讃線の特急列車は岡山から山陽新幹線に入って新大阪まで世界最速時速350キロで走行。』この妄想に関してはそのうち小説にしますので。
 北宇和島に着きました。私は宇和島まで行くので降りる用意をしてなかったのですが運転士さんが「八幡浜に行きませんのか。北宇和島ですよ」ああ、すみません、北宇和島で降りると思われていたんですね。「すみません、宇和島まで行きます」不思議そうな顔をした運転士は運転台に戻ってドアを閉めました。宇和島に近づくと私は荷物を整理して降りる用意をしてドアのところに立ちました。窓から八幡浜行きの列車がどこにいるのかを確認して、ドアが開いたら飛び出しました。八幡浜行きに乗車成功!
 八幡浜行の普通列車ですが、これもよく速度が出ました。予讃線は直線が多いんですね。トンネルも多いですが。ちなみにまたワンマンの1両編成です。全席ロングシートなのですがひとりひとりの座席の間に線があって独立したような形になっているし、5席ごとにひじかけがあるんですよ。なんとまあ、豪華なロングシートでしょうか。でも、車内は変なにおいがします。酒でいい気分になってるおじさんがいるのでそのせいかなあ。合宿でかぜをひいてぜんそくを再発させてげほげほしながら鼻もつまってるけどにおいがわかります。
 単線なので駅でのぼりくだりの列車が行き違うのですがぼろぼろの特急が来た、と思ったら特急用車両185系を改造した普通列車なのでした。座席はビニルカバーがかけられていて特急みたいに頭を置く部分の布のはりかえをしなくてもいいようにしています。高知や愛媛には面白い車両がありますなあ。高知のくろしお鉄道にはベランダのようなデッキのある車両がありますし。そいつが臨時でもなんでもなく毎日走ってますよ。
 ちょっと走ったらまた行き違いです。今度は特急でした。予讃線の松山と宇和島の間は特急が1時間に1本、16往復、それに対して普通列車もそれくらいの本数しかない路線です。
 宇和島という町は愛媛南部の中心都市です。八幡浜宇和島と愛媛の中心松山の間にある都市で、港町でして九州へ多くのフェリーが出ています。八幡浜に着いたのは23:10、深夜です。駅の待合室で高知で買ったチーズケーキとロールケーキを食べました。チーズケーキうめえ、すんげえうめえ。本当に半熟です。チーズのしっとりした味がたまんない。チーズ好きな私には最高。ロールケーキは、ああ、まあ、うまいっす。徳島の藍住にあるケーキ屋のロールケーキがうますぎてそいつと比較したら別にどうってことはないです。
 さて、朝以来何も食べてなかったのですぐに食べてしまいました。食事をする時間なんてつくってないですよ。それで、今晩泊まるところなのですが用意していません。八幡浜を出るのは5:33なので、それまで6時間どうにかしてつぶさないといけません。事前にネットで八幡浜駅近くにジョイフルがあるのを確認していたのでそこに行って朝まで過ごす予定です。駅前の国道を渡りました。深夜ですがトラックが多いです。さすがは港町ですな。ゆっくり歩いてジョイフルを見つけました。住宅街の裏路地に面しています。さっきの国道からは見えないところにあります。なぜだ! 
 緊急事態が発生しました。なんとこのジョイフルは深夜1時で閉店です。うぎゃああああああ! どうすりゃいいんだ!
 とぼとぼと駅に戻りました。そしたら酔っぱらいが怒鳴っていました。暴れてはないです。駅員に向かって「わしのことばかにしとるじゃろう。謝らんかいや。駅長出せと言うとるじゃろう!」やべえ、広島弁みたいな訛りですよ。まるで仁義なき戦いですよ。どうやらこのおじさんは禁煙なのにたばこを吸って駅員が注意したのですが、おじさんは注意のしかたが悪いと怒鳴っているようです。「禁煙でございますので注意をしただけです」
「それは今関係なかろう。注意のしかたじゃ。責任者出せ」「私が責任者でございます」「お父さん、あんたが悪いんじゃけん帰ろう」「おまえはだまっとれ。駅長か、おまえが駅長か」「いえ、助役でございます」「助役か、話にならんわ。駅長じゃ」「お父さん、はよう」「警察を呼びますよ」私は気が小さいのでケーキを食べた待合室でびくびくしていました。でも、ここで私がしゃしゃり出て何かあれば朝の始発まで時間がつぶせるのではないでしょうか。
「あんた、警察呼ばれたら困るじゃろう、さっさと帰ろう。恥ずかしいけん」奥さんらしき人が一番困っているようです。私は耐えきれずに鼻をかみました。激しく咳払いをしました。ぜんそくですからがっつりとたんがからんでいるので一度の咳払いでは収まらずものすごくうるさい咳払いを2、3、4、5回、ねっとりとした鼻水をかむために激しい鼻かみを3回。私が言うのもなんですがたいへんうるさいのでした。おじさんが怒鳴ろうとする瞬間を見計らって咳払いと鼻かみをしました。
 そしたら、なんか、おじさんの怒鳴り声がおさまりまして。「あんた、ほら、もう恥ずかしいけん」の声とともにずるずると引きずられる音がしつつおじさんは駅を出ていったようでした。ちなみに聞いていただけで見てはいません。
 さて、どうやって時間をつぶしましょうか。5:33発松山行の普通列車伊予市へ行きます。ちなみに八幡浜から少し進むと伊予大洲駅があってそこから伊予市駅のひとつ手前の向井原駅まで予讃線は海沿いの伊予長浜経由と山の中の内子経由に分かれます。5:33発は内子経由です。両方乗らないとね。とにかく、その5:33まで時間をつぶさないといけないのですが、ここで考えた策はこのあと0:15発の宇和島行特急に乗ってしまって宇和島へ行くのです。そしたら少し時間つぶしになります。でも、宇和島に戻ってしまったら困るだろう、って? それがそうでもないのです。宇和島を5:38に出る特急に乗ると八幡浜を5:33に出る普通列車より5分遅れで伊予市に到着します。伊予市から乗る予定の列車には5分遅れでも十分に間に合うのでした。というわけで、宇和島へ戻ることにしました。がんばって宇和島で乗り換えた意味はなくなりました。ま、時間つぶしにはなりましたよ。
 予讃線宇和島行特急宇和海の最終便がやってきました。お、乗客がけっこう乗ってます。よかった、よかった。宇和海は松山と宇和島を結ぶ特急です。松山宇和島間の予讃線は軌道が良好で宇和海は高速で走行します。ちなみに2000系です。岡山と高松から松山までは特急しおかぜ、いしづちで、松山からは宇和海ですが、それは松山までは電車の8000系で、松山から非電化の2000系というわけです。2往復だけのしおかぜ、いしづちには2000系が使用されて宇和島まで走ります。
 宇和島に戻ったところで何をしましょうか。八幡浜より大きな町なので何かあるのでしょうが、ネットで事前に調べたとき最も近いジョイフルが5キロ、別のファミレスが3キロです。ちょっと遠いっすねえ。歩けないこともないですが、宇和島で時間をつぶす予定ではなかったので地図を調べていないのでした。ま、行ってみて、時間をかけてよく考えるとしましょう。
JR四国をご利用いただきありがとうございました。お気をつけてお帰りください』最終便らしい車内アナウンスでした。宇和島駅を出ると、うーん、ホテルがたくさんありますが、どの店も真っ暗で、ああ、何もない、アーケード商店街も真っ暗で、ああ、何もできない。
 ケーキだけでおなかがいっぱいになるわけもなく、八幡浜のジョイフルで飯を食べる予定がなくなり、おなかも不安ですが、適当にぶらぶら歩いておりますと、おや、マクドナルドの明かりが見えるではありませんか。0:50ですよ。まさか24時間営業か! でも、まだ安心はできません。24時間マクドナルドは持ち帰りだけの場合もありますから。駅から店まで15分歩いて、店を確認すると店内での飲食も可能でした。助かりました。5時まで居座りましょう。
 でも、なんか掃除中のようで、あんまり長くいるのは悪い気がしますけど、セットを注文して掃除の終わった席に座ってゆっくりゆっくり時間が流れるのを待つのでした。

つづく。