やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」鑑賞感想

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2021年10月日本公開

監督:マイケルチャベス

脚本:デビッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック

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あらすじ:1981年、家主を22回も刺して殺害したアーニーは悪魔のせいで殺害したとして無罪を主張した。その無罪を証明するためウォーレン夫妻が事件を調査した。次第に呪いの正体が明らかになっていく。

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 日本でもAさんを呪ったとしてBさんが警察に逮捕されて裁判で有罪判決となった事件が実際にありました。この事件の場合、Bさんはわら人形を使ってAさんを呪っていました。そのことはAさんの周囲にも知られていました。そのせいでAさんは精神を病んだのです。その結果、Bさんによる呪いは脅迫罪となったのでした。

 このケースは、Aさんの周囲がBさんの呪いを知っていてAさんに教えてしまったという点が重要です。人伝に脅迫したことを警察は立証したのでした。

 もしもBさんが呪っていることを秘密にできていれば事件の立証はできなかったどころか、Aさんが病むこともなかったでしょう。

 というわけで、今回の死霊館の場合、立証が非常に困難です。家主を殺した件は覆す方法がいっさいない事実です。それを悪魔のせいにできるのか? どう考えても無理でしょう。

 作中での事件の行方と裁判の結果がどうなったのか、ご覧になって確かめてみてください。

 さて、このホラー映画が恐いかどうかについてですが、大きな音と急な出現でびっくりさせるものばかりです。なので、最初の10分くらいは開始早々なのでびっくりしますが、同じようなことを繰り返すので慣れてしまいます。グロさは少しあります。

 とあるデブが襲ってくる場面は、笑ってしまいました。何しろ、二度も襲ってくるのですから。

 それよりも、無罪を証明するためにウォーレン夫妻が謎解きする場面を楽しむべき作品でした。

 Blondieという歌手のcall meという曲が流れる場面は最高です。こんな場面でこの曲を使うのかよ!

映画「由宇子の天秤」鑑賞感想

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2021年10月公開

監督、脚本、編集:春本雄二郎

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あらすじ:ドキュメンタリー監督の木下由宇子は、自殺した高校生と高校教師の真相を追う映像を制作してテレビで流そうと努力していた。ところが、テレビ局は、その映像の中で報道に対する批判もあったため内容を差し替えろと指示した。一方で、由宇子は父がやっている塾を手伝っていた。そこの生徒が父によって孕まされたという事態に直面した。由宇子はこの事態にどう対処するのか。

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 最悪です。

 ヒトってのはここまで最悪の事態に巻き込まれるものなのでしょうか。

 こんな映画を思いつく監督が恐いですよ。フィクションは、ヒトをここまで悪者にできるものなんですね。フィクションは、ヒトに七難八苦を与えてしまうものなんですね。

 ゲロ吐きますよ。

 めいちゃんが本当にいい人なのか、矢野さんは本当に無実だったのか、そこをあまり見せないあたりはうまいなあと思いました。

 今追っている真相はどこにあるのか、わからないものですなあ。

 それにしてもテレビの醜悪な編集と、車に轢かれて重体になるめいちゃんはついこないだ見た空白と同じですね。

映画「クリスマスウォーズ」鑑賞感想

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2021年10月日本公開

監督、脚本:イアン・ネルムズ、エショム・ネルムズ

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あらすじ:サンタクロースはアラスカに実在した。毎年クリスマスに良い子へプレゼントを届けていた。そのために必要な資金は合衆国政府が提供していたのだが、良い子は

減りつつあった。プレゼントを配る量も減り、出来高払いだった資金も減らされた。サンタ工房で働く大勢の人々を支える資金に困ったサンタクロースは政府の提案を飲むことにした。一方で、サンタからほしかったものをもらえず怒りに満ちた子供が殺し屋を雇ってサンタ殺害を目論むのだった。その殺し屋も幼い頃にほしいものをもらえず復讐しようと心の奥底で考えていたのだった。サンタクロースとサンタ工房はどうなってしまうのか。

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 サンタの居場所は極秘です。存在そのものも秘匿されています。というわけで、殺し屋が居場所を探す過程が面白くなっています。

 サンタ工房で働く妖精みたいな連中も面白いし、工房を護衛している合衆国陸軍も面白いのですが、殺し屋が強すぎて陸軍はただのやられ役でした。

 あらすじを読むとふざけた作品なのかなと思われますが、たいへんまじめです。

 結末でサンタが悲惨な殺され方をしたのに、あっさり生き返ったあたりは何が起きたのかいっさい説明がなくて困惑していますが、なかなか面白い映画なのでぜひご覧ください。

映画「整形水」鑑賞感想

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2021年9月日本公開

監督:チョ・ギョンフン

原作:オ・ソンデ

脚本:イ・ハンビン

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あらすじ:美人タレントのメイクをしているイエジのもとへ整形水が突然届いた。その化粧水は20分ほどで人間の姿をガラリと変えてしまう。かなりのデブだったイエジは一瞬にして細身になった。新たな人生を歩もうとしてソレと名乗り、有名タレントへとなろうとするのだった。だが、そんなにすんなり物事は運ばない。

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 韓国のアニメはアーチ&シパック以来の鑑賞です。漫画の集中線が演出で使われていました。韓国のアニメだとあることなんですかね。

 子供だましの演出と脚本で興ざめしするところもあります。

 評価高いというから見たけど、そこまで良い作品ではありますまい。

 結末は、そう来たか! となりましたけども。

映画「MINAMATA」鑑賞感想

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2021年9月日本公開

監督:アンドリュー・レビタス

脚本:デビッド・ケスラー、スティーブン・ドイタース、アンドリュー・レビタス、ジェイソン・フォーマン

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あらすじ:アメリカを代表する写真家として称えられるユージン・スミス水俣水銀公害を撮影することになった。雑誌ライフに写真を載せるため撮影していたが、金と暴力で妨害してくる者たちがいた。彼の写真はライフへ掲載されることになるのだが、そこへ至るまでに何があったのか、ユージン視点で1971年の水俣を映し出す。

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 チッソ株式会社はフィクションでもなかなかないレベルの極悪企業です。15年間、水銀公害の事実を知りながら隠蔽して、金と暴力で市民を黙らせてきました。

 しかも、この映画によりますと、熊本県警まで関係者の家に乗り込み何もかもめちゃくちゃにしていたようですな。もう最悪ですな。

 これが日本で起きたことですよ。1970年といえば高度経済成長期、伸び盛りのときです。今の日本がほぼ出来上がった頃でしょう。そんなときに警察すらグルになっていたのはもう最悪です。

 あと、この映画が地元で公開されていないという情報をSNSで見ました。そんなの、絶対デマですわということで確認したところ数秒でデマだということがわかりました。そもそも水俣市に映画館がないし、水俣市に近い大きな都市の八代市にも映画館がないし、熊本市まで行かないと映画館がないんですよ。熊本市とその周辺の映画館6館で公開されていて、公開館数がむしろ多いということをご理解いただきたいです。

 さて、気になるのは、作中の水俣です。

 水俣駅が1970年頃のものとは似ても似つかない建物です。駅の構造も日本では絶対ありえないものでした。車両も当時の国鉄では見たことのないものですし、海岸線を走る鉄道の様子もありえないと思います。あのあたりで海岸線を走るのは阿久根のあたりなのではないかということで確認したところ水俣市と津奈木のあたりでものすごく海岸線を走っていました。すみませんでした。

 ただし、駅だけはやっぱり当時のものとは違います。肥薩おれんじ鉄道がこの映画に協力しているようですがおそらく車内の様子だけは本物なのでしょう。

 あと、民家も石を積んだものなんてありえないでしょう。農家の納屋よりも小さい倉庫みたいな家が10軒くらい並んでいる様子も、いくらなんでも日本のアレな地域でしか見ないものだと思いました。

 しかも、海辺で釣った魚をさばく場面がありましたけどマスでした。九州南部の海ではマスが獲れるんですか? すごいですね。

 そういうところはちゃんとしなさいよ。

 というわけで、水俣四日市神通川阿賀野川の犠牲の上に日本は豊かになりました。そして、今フクイチです。

 この映画は水俣水銀公害だけを責めているのではないということもご理解くださいね。世界のすべての公害を責めていますよ。

映画「空白」鑑賞感想

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2021年9月公開

監督、脚本:吉田恵輔

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あらすじ:娘の花音が車に轢かれて死んだ。父の添田充はかなり短気で手もすぐに出る。娘が「学校のことで相談がある」と言ったときも禁止していたスマホを見つけて家の外に放り出し、相談を聞いてやらなかった。そのことを悔やんだ添田は事故原因の一端となったスーパーマーケットの若い店長青柳を追い詰め、学校にも乗り込んだ。テレビやネットが添田と青柳の両方の人生を握りつぶしていった。彼らは救われるのか。

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 前半1時間は添田さんや学校の先生方が恐すぎて泣きそうになりました。

 陰キャの私が見るにはあまりにもきつい映画でございました。

 このようなフィクションはとことん人間を追い詰めてきますなあ。人間の悪いところをガンガン見せつけてきますなあ。ここまで人間を悪者にできるものなのですなあ。しかも、良かれと思っている人々も悪人みたいに仕立て上げてしまうのです。

 何もいいことないです。

 後半はとりあえず救われる形にはなるのですが、それもフィクション的に無理やり救った感じがあります。

 こんな悲劇をよく思いつきますね。でも、現実にこんなことがあるんですよ。テレビもSNSもクソですわ。我々人間は滅んだほうがいいのかもしれません。